親孝行大賞受賞作品 ★こころぽかぽか賞★ 『雨上がり倶楽部』

【ペンネーム】雨上がりさん
【性別】女性
【年齢】70
【住所】福井県福井市

【「親孝行大賞」のタイトル】
「雨上がり倶楽部」

【「親孝行大賞」の本文】
「雨上がり倶楽部」。部員2名。部長は私で、副部長は娘。現在ものんびり活動中。

5年前、私は主人を癌で亡くしました。69歳という早すぎる死でした。不思議なもので、悲しみという感情は時間が経つほどに止めどなく湧き上がるものです。何でもないときに涙がぽろぽろ頬を伝うのです。そして何とも言えないむなしい気持ちが絶えず胸の奥に潜んでいて、あんなに好きだった裁縫も、家庭菜園も何もかもやりたくなくなるのです。いつも心の中にあるのは「お父さん、早く迎えに来てくれないかなあ」。

娘は、私のそんな様子をいつも近くで見て、絶えず気にかけてくれました。
「このドラマ面白いよ。一緒に見よう」
「美味しいコンビニスイーツ買ってきたよ。一緒に食べよう」
「たまには温泉でも行ってのんびりしようか」
娘の優しさに感謝しながらも、正直、何を見ても面白くない、何を食べても美味しくない、どこに行っても楽しくない。楽しくないから外出も自然と億劫になります。いつも一緒にいて当たり前の主人を亡くすと同時に、私の感情も表情も全てが無になってしまったようです。それでも娘は一度も「頑張れ」と無理して励ますことなく、絶えず近くにいてくれました。

亡くなってから半年ほど経ったある雨降りの日のことです。娘は私に相談でもなく、提案でもなく、宣言をしに来ました。
「今日から『雨上がり倶楽部』を発足致します。部長は母さん。副部長は私。活動内容は、雨上がりの虹を探して一緒に眺める、それだけです。では、部長一緒に探しに行きましょう」
娘は淡々と説明し、私はポカンとよく分からないまま娘の車に乗り、雨降りの中ドライブに出かけました。娘は言います。
「副部長の私は車の運転に集中するから、部長の母さんは、しっかり全力で虹を見つけてね」
雨が上がり、晴れ間がのぞいたとき、私は車窓から全方向を見まわし、娘に言われるがまま虹を探しました。探して探して、結局その日は虹を見つけられず。ただ、そのときなぜか「残念」という気持ちは全くなく、「嬉しい」という温かな喜びが湧き上がったのを確かに感じたのです。

虹は見えなかった。それでも雲の切れ間から光は真っすぐ指していた。まるで主人からの贈り物にも感じるほどの優しい温かな光を見たときに、私はふと感じたのです。雨は上がる。いつ上がるか分からないだけで、必ず光は差すのだと。

あの日から、私の外出は確かに増えました。娘と一緒のときはもちろん、私一人でも散歩しながら「雨上がり倶楽部」は活動中です。娘と二人のときは、虹を見つけると鑑賞会が始まり、しばし、のんびりと眺めます。私一人のときは、写真にとって娘に自慢げに報告です。雨は降ってもいつか上がる。雨降りはきれいな虹を見つけるチャンスになる。私の心に降る雨を、次の一歩につなげる虹に変えてくれたのは、確実に娘のおかげです。

最新情報をチェックしよう!
>「親孝行のカタチ」が目指す社会とは?

「親孝行のカタチ」が目指す社会とは?

「親孝行」を通して家族が幸せになり、
社会全体も思いやりでいっぱいの世の中にすること

CTR IMG