【ペンネーム】やまさんさん
【性別】女性
【年齢】30代
【住所】山口県下松市
【「親孝行大賞」のタイトル】
お母さんへ
【「親孝行大賞」の本文】
お墓参りにいくと、いつも少し長くなります。
話したいことがたくさんあるからです。「元気ですか?」から始まり、「こっちは暑いよ」とか「庭でピーマン豊作だよ」とか、何気ないことばかりですが、手を合わせたまま、心の中でつい話し込んでしまいます。
「かーちゃんにはかーちゃん、いないの?」
と息子が3歳の時にききました。
「かーちゃんのかーちゃんは、かーちゃんが小さい時に死んでしまったんよ。かーちゃんのかーちゃんは、いないんじゃなくてお空の国にいるよ。お墓にもいるよ」
そう言った時から、息子は、墓参りで長々と手を合わせる私に、何も言わなくなりました。ただ、そっと、隣で一緒に、長々と手を合わすようになりました。
「かーちゃんは1000歳まで生きてね!!」
今年5歳になった息子は、最近墓参りにいくと必ずそう言ってきます。
そうして、夜はぎゅうっと私の手を握り、寝るのです。先日は、私が眠れないとわかると、トントンと優しくからだを叩き、少し調子外れな子守唄を歌ってくれました。小さな体温に導かれるように、いつもより、よく、眠れました。
……お母さん、親孝行など一つもできず、お別れしたこと。私はずっとずっと自分を責めてきました。私を産んだせいで、もともと身体の弱いお母さんは寿命を縮めたのでは、とも思っていました。
でも、息子が生まれ、思うのです。親孝行など望まない、あなたが生きてくれたら、て。
もしかしたら、お母さんもそう思ったのではないですか?あなたはいつも、私を愛おしそうに見ていたから……。
でもお母さん、親孝行一つできなくて、やっぱりごめんね。生きていて欲しかった、なんて、今でも思うよ。頑張るね。あなたによく似た息子と一緒に。