「親孝行大賞」ハッピー賞 「 次女のジンクス」

千葉県千葉市 米屋の娘様の作品

ここは小さな商店。我が家のちょっとしたジンクスがある。なぜか代々次女が家業を継いでいるのである。ちなみに私は、三人兄弟の次女である。

でも両親は私達が小さい頃から誰も店は継がなくていいと言ってきた。特に母は、自分が子供の頃から親は忙しいし、自分の夢なんて関係なく継がなきゃいけないし、商人の家に生まれたのが嫌だったのだとか。だから私が商業高校に進学したいと言ったら猛反対。姉と弟はさっさと自分の道を決め、家を出た。なんとなく継がなくていいのかな……と思いつつ、自分にできる自信がなくて、結局私は普通のOLを続けていて子供も生まれた。

数年前、家業に必要な資格を親に内緒でこっそり取得した。幸い両親はまだ元気で、あっちが痛い、こっちが痛いと言いながら毎日重いお米や灯油を運んでいる。古い付き合いのお客さんたちはみんな高齢化して、中には自分の息子はわからなくなっても米屋のお姉さん(そのお客さんから見たら母もまだ若いうちなのでしょう)ならわかるというお客さんもいるくらいだ。辞めたくても辞められないと笑って話す母の顔はどこか満足気だ。

私もやっぱり商売が好きだ。子供の頃から手伝ってきて大変なのは重々承知だ。それに今の会社にいた方が安定しているのもわかっている。家業がそんなに順調でないことも察している。

それでもなんだか心に引っかかるというか家業が私を惹き付けて離さないのだ。これが商人の性なのか。三十路を過ぎて、ひっそりと家を継ぐと心に決めた。次女の私に幾ばくかの商才があると信じて。これが私の最大の親孝行だ。

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