【ペンネーム】ヨウさん
【性別】女性
【年齢】30代
【住所】長崎県長崎市
【「親孝行大賞」のタイトル】
父の魚
【「親孝行大賞」の本文】
定年退職した父は、かねてからの趣味の釣りを毎週のように楽しんでいる。
実家に帰ると刺身が振る舞われ、かつて私の部屋だった場所には、魚様の新しい冷凍庫まで増えていた。
先日実家に少しだけ寄ったら、ちょうど前日に釣りに行ったとのことで、家族で食べなさいと、帰り際に大きなタイの切り身を持たされた。
明日までは刺身に出来ると言われたが、昨日も刺身を食べたばかりだったので、ソテーにすると伝えた。
父が少し席を外した際、母から、
「嘘でも良いから、刺身で食べると言いなさい。釣りをする人にとっては、新鮮な刺身で食べると言われた方が、嬉しいの。これも親孝行になるのよ」
と言われた。
母が認知者になり入院していた祖母のお見舞いに行った際、賞味期限が切れたお菓子や食べ物を帰り際に渡されたが、いつも「ありがとう」と笑顔で受け取っていたことを思い出した。
父が戻って来た時、
「やっぱり、刺身で食べるね」
と言ったら、父は少し嬉しそうな顔をしていた。
もらったタイは子どもたちにはソテーで出したが、私は刺身のままで食べた。
やっぱり、父の魚は新鮮で美味しい。