親孝行大賞受賞作品 こころにビタミン賞『103歳の童謡』

【ペンネーム】ろく4649さん
【性別】男性
【年齢】80代
【住所】福岡県福岡市

【「親孝行大賞」のタイトル】
103歳の童謡

【「親孝行大賞」の本文】
故郷を離れて、全国を転々とするサラリーマンの私は、母を見舞うことがなかなか出来ないのが悩みの種であった。

せいぜい年に数回、母のいる老人ホームに行くのがやっとであった。晩年は顔を見分けるのもままならぬ母であり、見舞いに行くと最初は、ちょっと怪訝な顔をすることさえあった。

しかし、小さい頃、
「お母ちゃんと畑で20日大根を一緒に作ったのが楽しかった」とか
「作文の宿題はいつもお母ちゃんにしてもらった」とか
「お手伝いをするとお母ちゃんは砂糖をスプーン一杯分舐めさせてくれた」
・・・などなど実にたわいもない会話をしている内に、昔を思い出してくれて母の顔が生き生きしてくるのがわかった。

そして、決まって面会時間最後の方では、ベッドに座った母と手を取り合って、「童謡」を歌うのがお決まりのパターンであった。

大きな声で歌うので、ナースや介護士さんまで部屋の中に入ってきてニコニコしながら、見守ってくれた。

それなりに気をつかっているので、数時間の面会時間は私の方が疲れていたかもしれない。童謡も一通り終わるとお暇する時間となる。

この時が一番つらい。「また来るからね!」と言っても手を握って離さない。私自身も今度いつ来れるかは確信が持てない。本当に後ろ髪を引かれる様な気持ちである。

涙を流している母の手を強引に離して、別れるのである。私は間に合わなかったが、母は103歳の大往生で、全く苦しむ事もなく、息を引き取ったと立ち会った姉から聞いた。

あれからもう20年が経つ。童謡を歌うことが「親孝行」になったかどうかは分からぬが、私自身が「終活」を意識せざる歳になった。

充分親孝行が出来なかった分は必ず天国で行う積りである。

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