第二回「親孝行大賞」受賞者発表!

目次

第二回「親孝行大賞」受賞者発表!

親孝行大賞

  • 愛知県名古屋市 むぎこ様 (30代女性)

『笑顔、送信!』

このコロナ禍。会いに帰るのが親孝行か、我慢して帰らないのが親孝行か。私たちは迷いに迷っていた。
「大丈夫? 元気にしてる?」
父親と兄を続けて亡くしただけでなく、脳梗塞に倒れた母親もみている母。精神的にも肉体的にも日々身を削っている状態な上、コロナのせいもありリフレッシュも難しい。心も身体も心配だった。帰って何か手伝えないか、心を支えられないか。せめて一時の癒しになれないか。私たちは母に意見を聞いてみた。
「帰ってきて欲しい。会いたい。辛い、寂しい」
「帰ってこないで欲しい。万が一母親がコロナにかかったら、あなたたちがコロナにかかったら、そう考えると怖い。もう誰も失いたくない」
矛盾しているが、どちらも本音。私たちも同じ気持ちだったので、痛いほどわかった。リモート帰省も考えたが、環境を用意するのが難しい。
「どうしよう」
私たちが頭を抱えていると、ふいに娘がにっこりと私たちを覗き込んだ。娘の笑顔につられて、主人が笑う。気づけば私も。
笑顔を見ていると、笑顔がうつる。その事に気づいた私達は、少しでも母に笑ってほしくて、楽しいことや嬉しいことの写真を送ってみることにした。
2、3日続けていると、母から反応があった。祖母と一緒にその写真を見ていること、刺激の少ない生活の中で、話の種や笑顔の元になっていること。返事に良い写真を送りたいからと、祖母が前向きにリハビリに取り組むようになったこと、それによって母も前より前向きになれたこと。
それから私達は、自粛生活の中、小さな幸せを見つけては写真に撮り、送り合うようになった。散歩道に綺麗な花を見つけたとか、夕飯が素敵に盛れたとか、虹が出たとか、折り紙が折れたとか。どれも些細なことだったが、昔、食卓を囲んで語り合ったような話ばかりで、なんだか懐かしく、温かい気持ちになった。
「孝行娘&孫へ」
というメッセージとともに送られてきたのは、大好物の芋の煮っ転がしの写真。あなた達のことを思って作りました、あなた達と食べられる日を想いながら食べます、とのこと。
孝行娘。親孝行は、もっと難しいものだと思っていたが、昔から自然にしてきたことで良かったのだと思えた。幸せを分け合って、笑い合って。それが周りに広がって、また笑顔が返ってくる。
コロナ禍を通じて、人と人との繋がりの大切さを思い知った。離れていても、できることはある。母は今日も笑っているだろうか。
「あ」
小さな幸せを見つけると、それを知らせた時の母の笑顔が思い浮かぶ。私たちは今日も「きっと喜ぶぞ」とワクワクしながら、送信ボタンを押す。昔話しかけたように、「おかあさん、あのね」と。


いい話で感動した賞

  • 広島県広島市 かぜのこ様(20代女性)
  • 大阪府大阪市 渡辺廣之様 (60代男性)
  • 徳島県立脇町高等学校 松 岡 愛 莉様

<代表作品>広島県広島市 かぜのこ様の作品
『ママのかたもみけん』

この夏、里帰り出産をした。
仕事も産休に入ってひと段落し、広島から東京の実家に半年ぶりに帰省した。
出産まで特にすることもないので、高校卒業と同時に実家を出てからそのままになっていた自分の部屋をゆっくり整理することにした。
次から次に出てくる、幼少期の思い出。交換ノートやリコーダー、卒業アルバムやシール帳。懐かしくてたえず手が止まり、なかなか作業が進まない。
その中に紛れていた、「ママのかたもみけん」が目にとまった。
手のひらサイズに切った工作用紙に、小学校時代よく練習していたピカチュウのイラストと、拙い字で「10コたまると、ごうか商品と交かん!」という文字が書いてあり、裏面にスタンプが7つ押してあった。当時親が持っていたお店のスタンプカードか何かを真似して作ったのだろう。
(あと3回分か)
買い物から帰宅した母にその券を見せて、
「有効期限書いてないみたいだし、今日1回分使う?」
と冗談まじりに聞いてみた。
「ぜひお願いします」
とにこり。久しぶりに触った母の肩はガチガチに硬く、少し丸くなっていた。簡単に帰れる距離でもないので、この凝りを頻繁に解消してあげられないことを残念に感じた。
「あの頃、あなた10分間必死で肩もんで、はいスタンプ押しますね!って喜んでたよね」
「そうだっけ?」
「今度は生まれてくる孫にもんでもらおうかな」
「やるかな。嫌がるんじゃない?」
と会話が弾む。
「ところで、この“ごうか商品”ってなんだったんだろうね?」
母がぼそっと言う。
「よく作ってたリリアンとかビーズだよ、きっと」
こんな思い出話に花が咲き、出産を迎えるまで親子でのどかな時間を過ごした。
約20年ぶりに再開した「かたもみけん」は、結局里帰り期間中に3回分のスタンプがたまったが、途中からは新しい命も産まれて、それどころではなくなった。
生後一ヶ月健診を無事に終え、新生児を連れて広島に戻り、新しい生活が始まった。
初めての育児に追われながら、実家から引っ張ってきたスーツケースを少しずつ片付けていると、荷物の端からヒラリと「かたもみけん」が出てきた。すっかり忘れていた。
先日、スタンプが全てたまった「かたもみけん」に、ペア旅行券を同封し、実家へ郵送した。「おめでとうございます!豪華商品です!孫に会いにきてね」と手紙を添えて。


こころぽかぽか賞

  • 兵庫県五色町 まるぽち様 (40代女性)
  • 愛媛県今治市 みみ様 (40代女性)
  • 京都府京都市 まる様 (50代女性)
  • 京都府京都市 莉子様 (10代女性)
  • 奈良県生駒市 シナモンズ様 (30代女性)
  • 広島県広島市 ひめことにここ様 (50代女性)
  • 熊本県玉名市 りゅーずゆいはる様 (40代女性)
  • 京都府舞鶴市 和尚様 (40代男性)
  • 神奈川県横浜市 みひろゆう様 (30代女性)
  • 神奈川県川崎市 守ちゃん様 (70代男性)
  • 愛知県名古屋市 住 田 沙 織様 (30代女性)
  • 兵庫県神戸市 高 木 勇様 (70代男性)
  • 大阪府堺市 テツオ様 (10代女性)
  • 長崎県長崎市 青山ナツ様 (60代女性)
  • 大阪府吹田市 おとみさん様 (70代男性)
  • 千葉県柏市 よっちゃん様 (30代女性)
  • 群馬県桐生市 甘えっ子様 (60代女性)
  • 東京都練馬区 大 篭 秀 之様 (50代男性)
  • 奈良県生駒市 あみ様 (10代女性)
  • 神奈川県伊勢原市 もりみよ様 (30代女性)

<代表作品>京都府舞鶴市 和尚様の作品
『父親と交わした固い握手』

私の父親は、長年、町役場の職員を務め、その後も地域の役を引き受けたり、ソフトボールや田畑の作業に精を出したりと、とても元気に活動していました。
ところが、古希を迎えた昨年、食道癌を患いました。
毎回の通院付き添いやお見舞い等、今までよりも共に過ごす事や会話も増えましたが、様子をうかがう中で、明らかに活動が制限され気分的にも落ち込むようになっていました。
幸い、入院手術を経て、また何とか元の生活を送ることが出来るようになり喜んでいますが、体重は手術前より10㎏以上減って見た目も変わり、体力も落ちました。以前は、父親が一人でしていた作業も難しくなり、長男である私や弟に作業の手伝いを頼むことが増えました。
先日も、庭の大木が枯れてきたため、引っこ抜く作業を一緒にしていました。
しかし、思ったよりも太い根が広い範囲に張っていて、チェーンソーやつるはしを使用する程の大掛かりな作業になりました。
大木と格闘する事2時間、ついに引き抜くことが出来ました。
その瞬間、父がさっと軍手を付けた右手を差し出してきて、ひとこと「やったな」と言ってきました。すかさず私も右手を差し出して「あぁやったぁ」と固い握手を交わしました。
父親と握手を交わすなんて、何年振りの事か思い出せませんでした。もしかしたら初めての事かも知れません。父親の病気によって、共に過ごす時間も増えて、関係性も変化してきたように思います。
今後も、母親も含めて共に過ごせる時間を大切に、両親の生活を支えていき、微力ながら今までの恩返しをしていきたいと強く思った瞬間でした。


ちょっといい話で賞

  • あきる野市立秋多中学校 池 野 華 依 音様
  • あきる野市立秋多中学校 神 津 は る か様
  • 池田学園池田小学校 か い だ み う様
  • 池田学園池田小学校 大 勝 太 郎様
  • 池田学園池田小学校 後 藤 海 斗様
  • 池田学園池田小学校 殿 園 美 愛様
  • 北海道札幌市 あや様 (30代女性)
  • 長崎県長崎市 ヨウ様 (30代女性)
  • 大阪府大阪市 かえる様 (30代女性)
  • 東京都大田区 のん様 (30代女性)
  • 埼玉県川越市 ともみ様 (20代女性)
  • 東京都目黒区 ひよこ様 (50代女性)
  • 愛知県名古屋市 H.I. 60歳様 (60代男性)
  • 青森県八戸市 母の娘様 (30代女性)
  • 埼玉県所沢市 小松崎元気様 (20代男性)
  • 東京都杉並区 なつこ様 (40代女性)
  • 東京都調布市 わんちゃん様 (20代女性)
  • 兵庫県西宮市 柚子畑様 (30代女性)
  • 大阪府大阪市 前 田 真 由 子様 (30代女性)
  • 滋賀県野洲市 うっかり八兵衛様 (40代女性)

<代表作品>北海道札幌市 あや様の作品
『私の母の親孝行』

今から5年ほど前の話になります。私の祖父も80歳を超え、体調を崩すことも多くなっていたこともあり、私の母と私、そして子供たちと一緒に祖父の元へ遊びに行きました。
その日は体調も良さそうで、外から何か盛り上がっている声が聞こえてきたのですが、私はてっきり自分の子供たちがはしゃいでいたのだと思い、窓から様子を見てみると、そこには母と祖父が何やら楽しそうに畑作業をしていました。
そんなにはしゃいでいる母の姿を見たのははじめてで、びっくりしたのを覚えています。祖父もとても嬉しそうで、私はそっと窓を閉め、ほっこりしました。
その数日後、祖父は天国へと旅立ちました。
私はあれはきっと母が祖父に出来た、最後の親孝行だったように思います。そんなエピソードが私の心の中にいつまでも残っています。


ハッピー賞

  • 京都府京都市 前田憶人様 (10代男性)
  • 岐阜県本巣市 梅左衛門様 (50代女性)
  • 千葉県山武市 長 谷 川 春 奈様 (30代女性)
  • 沖縄県那覇市 ゆーみー様 (30代女性)
  • 山梨県都留市 もこ様 (30代女性)
  • 滋賀県栗東市 みきたん様 (50代女性)
  • 埼玉県さいたま市 メラニン様 (20代女性)
  • 大阪府枚方市 短パン先生様 (40代女性)
  • 宮城県仙台市 めん様 (30代女性)
  • 山口県宇部市 高 瀬 啓 子様 (60代女性)
  • 埼玉県入間郡 るこたん様 (60代女性)
  • 神奈川県横浜市 やすす様 (40代女性)
  • 愛知県名古屋市 BKH様 (50代女性)
  • 北海道旭川市 鎌 田 優 子様 (60代女性)
  • 愛知県海部郡 たーたんまま様 (40代女性)
  • 大阪府高槻市 宮 本 柚 葉様 (10代女性)
  • 福岡県福岡市 久 家 祥 子様 (30代女性)
  • 埼玉県川口市 牛込のぶゆき様 (30代男性)
  • 奈良県生駒市 徳田陽様 (30代女性)
  • 鳥取県米子市 けめたん様 (50代女性)

<代表作品>大阪府枚方市 短パン先生の作品
『カード』

母の日やお誕生日には、ちょっとしたプレゼントとカードを渡していた。プレゼントはもちろん、特にカードは可愛いね、と喜んでいた。カードは、飛び出す絵本のようなものを渡すこともあった。
が、仕事が、忙しくうっかりカードを買い忘れることもしばしばあった。100均一の安いカードや便箋にメッセージを書いたりして、ちょっと手抜きをすることもしばしばあった。
ある時、ちょっと見せたろか、と母。お菓子の空き箱に、ぎっしり入ってた今までのカードや手紙。ちょっとした紙に書いたお手紙などがしまってあった。
老後の楽しみに、年をとったらまた読むねん、と言っていた母は、今年喜寿。プレゼントはなくても、カードはちゃんと渡そうと思い、手抜きした自分を反省しました。


元気になったで賞

  • 大阪府大阪市 淀川太郎様 (10代男性)
  • 香川県高松市 きらら様 (40代女性)

<代表作品>大阪府大阪市 淀川太郎様の作品
『遺伝』

僕の父は昔から単身赴任でいつも家にいなかった。
昔からそれが当たり前だったためとくに寂しいと感じたことはなかったが、たまに帰ってきたときに一緒に古本屋に行くのを楽しみにしていた。僕は漫画コーナーへ父は難しい活字ばかりの本が並ぶコーナーへ、時間がたつとそれぞれが本を持ってきて、父に本を買ってもらうのだ。
僕は思春期になり父と話すこともなくなった。父は一人で古本屋に行くことが多くなっていた。父が単身赴任に行っている間に父の部屋に行くと昔よりずいぶんと本が増えていた、何冊か僕でも読める本が増えていた。
大学生になるタイミングで僕は一人暮らしのために実家を離れた。一人暮らしになってから本を読むことが増え、一人で近くの古本屋によく行くようになった。昔とは違う父がよくみていたコーナーの方へ何冊か本を買い、家で読む。
久しぶりに実家に帰った。父の部屋に入ると何冊か見覚えのある本たちが棚には並んでいた。僕の部屋にも同じ本が並んでいる。やっぱり僕は父の子供なんだと感じた。
父とはいまでもあまり話さない。
僕はいま小説家を目指している。単身赴任で遠くにいる父が、仕事終わりに古本屋によるのだ。父がいつものコーナーで新しい本を探す。そこに見覚えのある名前を見つけるのだ。離れているまま、思春期のまま、話すこともなくなった僕たち親子だが、本を通してなら伝えられる気がする。いつか父の部屋の本棚に僕の本が並んだら、本の感想を聞いてみよう。そして、一緒に古本屋に行こう。それがきっと僕たち親子にはふさわしいと思うから。


ハートフル賞

  • 三重県四日市 二 村 直 子様 (50代女性)

<代表作品>三重県四日市 二 村 直 子様 の作品
『お父さんの誕生日』

「もう出かける?今日、お父さんの誕生日だから、出かける前におめでとうくらい言ったら?」
洗面所で髪を整えている長女にそう言うと、
「分かっとる」
と、めんどくさそうに答える。仕事を始めてまだ3か月の長女は、朝の段取りに必死だ。出かける支度を終えると普段は玄関へ直行だが、その日の朝はキッチンへ小走りに立ち寄った。
長女はキッチンのドアを開けると、朝食を食べている夫に向かって、
「なぁ、お父さん、いくつになったん?」
と、ドアに手をかけたまま、ぶっきらぼうに聞いた。
「53やけど」
夫がびっくりした顔で言うと、
「まだ53歳か、54歳かと思ったわ」
そう言ってキッチンのドアを閉め、仕事に出かけた。
言葉足らずで、うまく優しく言えない長女の、精一杯の「おめでとう」の言葉がおかしくて、夫と私は目を合わせてクスクス笑った。夫はやけに嬉しそうで、
「あいつ、俺の誕生日覚えとったんやな」
とにやけているので、私が長女にあおったことは黙っておいた。やっと起きて来た中学生の長男は、夫の前に座るとすぐに、
「お父さん、誕生日やろ、おめでとう。今日、ケーキどうするの?」
と、笑顔で言った。長女とは真逆の「おめでとう」に、夫と私はまた目を合わせてニヤッと笑った。
肢体不自由の二女は、夫が仕事に出かけようとしてもまだ眠っている。通所施設に出かける直前まで、人工呼吸器を付けて寝ている毎日だ。声を掛けたくらいでは起きない。無防備な寝顔を見ながら、夫と目を合わせて、
「この子もなかなかやるな」
と笑い合った。三人子どもから受ける笑いのひとときを、心から幸せだと感じた、夫の誕生日の朝だった。


こころにビタミン賞

  • 愛知県立名古屋聾学校 伊 藤 俊 貴様
  • 愛知県立名古屋聾学校 平 井 輝様
  • 愛知県立名古屋聾学校 坪 井 雅 也様
  • 新潟デザイン専門学校 犬冢椛様
  • 徳島県立脇町高等学校 原 龍 世様
  • 徳島県立脇町高等学校 高 原 知 希様
  • 徳島県美馬市 鎌 田 聡 太 朗様 (10代男性)
  • 神奈川県川崎市 小 西 南様 (30代女性)
  • 岡山県岡山市 羽の生えたうさぎ様 (60代女性)
  • 福岡県福岡市 ろく4649様 (80代男性)
  • 島根県出雲市 紫蘇ジュース様 (40代女性)
  • 熊本県熊本市 はるちゃん様 (40代女性)
  • 滋賀県守山市 coni様 (50代男性)
  • 東京都練馬区 オダ チアイ様 (30代女性)
  • 福島県南相馬市 ほかりゆうか様 (30代女性)
  • 奈良県奈良市 伝 宝 み な み様 (10代女性)
  • 滋賀県大津市 ヨーダ様 (40代女性)
  • 兵庫県西宮市 や す が け い様 (10歳未満女性)
  • 東京都調布市 はなまる様 (20代女性)
  • 東京都清瀬市 和 田 潤様 (30代男性)

<代表作品>滋賀県守山市 coni様の作品
『鯖寿司』

地元の祭りなどの時に義母が作る鯖寿司は日本一旨いと思ってきたし、息子達も大ファンです。妻の実家は車で10分ほどなので、鯖寿司に限らず収穫できた米に野菜、色々な煮物を貰ってます。
ところが高齢になった義母の料理の味にバラつきが見え出しました。常に旨かった味が時々「???」になったのです。
それを一緒に食ってた長男が危機感を持ったのでしょう。「今のウチに鯖寿司の作り方を弟子入りして覚える」と言い出しました。義父母に頼むともちろんOK、しかし並大抵ではなかったのです。
まずは鮮度の良い鯖を手に入れるため、鯖街道を北上して日本海近くの店まで買いに行くことからでした。片道1時間以上もよく義父の運転で行ってたものです。義父も高齢となり流石に長距離運転を諦めたので、今後は一族の誰かが送迎することになりました。
持ち帰った鯖を捌くのは義父でした。夫婦共同作業だったのですね。骨を抜き酢で〆た後の義父の切り方や、義母の酢飯の作り方や押し方もノウハウ満載で、長男は何度も通って自宅でも復習しました。まぁ、なんとか近づけた頃合いで指導は終わりました。
その後、義母に煮物を貰うと味が元に戻りました。鯖寿司の作り方を孫に伝える大役に気持ちが張り直し、ちょっと認知症に向かいかけていた脳が回復したのかも知れません。
息子の味ではまだまだ届いてないので、義父母が元気なウチは運転手役をかってでも、老夫婦の旨い鯖寿司合作を楽しみにしたいです。


スマイル賞

  • 岐阜県加納東丸町 おべんとう様 (50代女性)
  • 愛知県豊川市 涙目さん様 (20代女性)

<代表作品>岐阜県加納東丸町 おべんとう様の作品
『2つのカレー』

サンタさんに手紙を書いて、自分用の包丁を頼んでいた5歳の娘。サンリオキャラクターのついた、可愛らしい安全包丁が枕元に置かれていた。2005年のクリスマスのことである。しばらくの間、おままごとに使われていた。その愛らしい姿を、微笑ましく眺めていた。すごく気に入ったようで安心していた。
その頃、母の日が近くなるとテレビから「母の日はカレー」という宣伝文句が気になるようになった。なるほど、父親と作るにはちょうどよい。母親も少しは楽ができる。しかし…この宣伝文句に、どうか気が付かないで…と、私はずっと願っていた。
何故なら、その日のお昼ご飯は、ずっと前から母とCoCo壱番屋のカレーと決まっていたからだ。私が大学生の頃からの習慣で、母が願ったものだ。就職をして、私に少しはゆとりができても、結婚をしても変わらなかった。はじめは、私の懐具合を気にしての提案だったであろう。
しかし、今は毎年、変わらないことを楽しみにしていたのだと思う。その証拠に、就職と同時に付け合せが豪華になり、注文にも遠慮がなくなっていったからである。この日ばかりは、父は遠慮してくれた。二人で過ごす大切な時間であった。
カレーは大好きである。しかし、お昼と夜…二回続けるのは…避けたい。だからテレビよ、余計なことを言わないで…しかり、2006年の母の日。恐れていたことがおきた。晩御飯に用意されていたものはカレーであった。不揃いの人参、甘すぎるカレールゥどれも、私の好みではなく、主人と娘の大好物である。得意げに、自前の包丁を持った娘が微笑んでいた!
私はサラッとしたカレーが好きなのである。母譲りである。しかし…幸せなのである。美味しくないけど、嬉しいのである。素直に気持ちを伝えると、毎年、母の日には、少しずつレベルアップしたカレーが用意されるようになり、今年、二十歳を迎える娘は一人で、しかも、私好みのカレーを作るまでに成長した。
では、私の母との時間は?
まだ、続いているのである。少しずつ食が細くなってきた母。あれ程遠慮なく頼んでいた付け合せも減ってきた。毎年同じものを食べているから分かること。寂しくもあるが、また来年来られますようにと、当たり前に迎えるこの日を、一層幸せに思えるようになった。
親孝行をして、親孝行をされる日。2つの孝行が重なる日、私は2週間前からカレーを断つのである。


ホスピタリティ賞

  • 宮城県仙台市 はるママ様 (30代女性)

<代表作品>宮城県仙台市 はるママ様の作品
『昔からある風景』

私は母子家庭で育ち、早くから台所に立って、料理を教わっていました。幼少期はつま先立ちで覗きながら、小学校でお茶碗洗いを任せられ、一通りの料理は中学生で出来るようになりました。
女手一つで育ててくれた母。仕事で帰宅が遅い日はご飯を作って待つのが日課。美味しいね、と褒めてくれる母に料理を作るのが大好きでした。それがキッカケで調理師の道へ進みました。
あれから10年、私も家庭を持ち子供が出来てしばらく会えていない母を自宅へ招待しました。久しぶりに母と台所場に……あの頃より小さくなった母を横目に、シワシワの手におぼつかない包丁さばき。
味付けはもう自信がないの、と私に任せ、あの頃とは立つ場所さえも違う。
隣で洗い物を片す母に淋しさを感じてしまいました。味見してみて、と母が私の料理を食べてひとこと。
「…しっかりと、私の味付けだね」
そうだよ。卵焼きは甘かったでしょう。煮物は少し薄目だけど魚だけは甘辛くて。普段は分からなかった。
あの頃隣で見上げてた母はもう居なくて私の料理を頷きながら食べている。あと何回こうやって食卓を囲めるだろう、母に美味しいと喜んでもらえるかな。


親にありがとう賞

  • 新潟県小千谷市 わこ様 (60代女性)
  • 山口県下松市 やまさん様 (30代女性)
  • 千葉県木更津市 安田蝸牛(ヤスダカギュウ)様 (60代男性)
  • 福岡県北九州市 大 藤 哲 生様 (70代男性)
  • 兵庫県南あわじ市 谷口ゆみ子様 (50代女性)
  • 北海道札幌市 あちゃまる様 (10代女性)
  • 埼玉県さいたま市 くるみちゃん様 (20代女性)
  • 神奈川県横浜市 むぉ様 (30代女性)
  • 神奈川県横浜市 三児ママ様 (50代女性)
  • 兵庫県西宮市 やすよ様 (30代女性)

<代表作品>千葉県木更津市 安田蝸牛(ヤスダカギュウ)様の作品
『月見』

「明日はもう忘れる父と月を愛で」
九月のある穏やかな晩に、帰宅すると今日は仲秋の名月であることを思い出しました。折しも盆の様な月が煌々と東の空に掛っている所でした。
これは是非父にも見せなければと思い立ち、渋る父を宥めすかして庭に連れ出したところ、パッと目を輝せて月を見上げるではありませんか。こんな表情の父を久し振りに見た思いがしました。
既に認知症が大部進行していた父でしたが、健常であった頃には、手すさびながら俳句や短歌の創作もしていました。久方振りに「情趣の心」というものが蘇ったのかも知れません。
良いものを見せて貰ったと何度も言う父も、恐らく明日の朝には覚えていないだろうと思うと切なくも成りました。しかし今は、その後一年を経ずに亡くなった父への、最後の細やかな孝行だったように思えます。


いいね!親孝行賞

  • 沖縄県名護市 アーサー様 (30代女性)
  • 石川県七尾市 はむ部様 (30代男性)
  • 千葉県船橋市 はるみ様 (40代女性)
  • 福岡県福岡市 たわし様 (30代女性)
  • 埼玉県川口市 猫のミヤ様 (40代女性)
  • 愛知県小牧市 apple56様 (70代)
  • 福島県福島市 母娘で同じ色の車様 (40代女性)
  • 神奈川県横浜市 川 村 雅 恵様 (30代女性)
  • 宮城県石巻市 木立慈雨様 (50代男性)
  • 山形県鶴岡市 ぼんよ様 (30代女性)

<代表作品>沖縄県名護市 アーサー様の作品
『親とは』

結婚し、妊娠した。いまだにお腹の中に人間がいるなんて信じられない気持ちが湧いてくる。常日頃、親孝行って何だろう。親孝行って何をすればいいの。何かを贈る、家にお金を入れる、一人前になって手を離れたことになれば親孝行出来ているかな?と考えていた。
だけど気づいた。私も親になる。ここに私の子が居る。ふと、お腹をキックされる。お腹を撫でながら、元気だな〜と声をかける。元気だと安心する。生きてるだけでいいのだ。
親になってからでないと分からない事があるという意味、ちょっとわかったような気がする。もちろん生きてるだけで感謝してね!なんて言わないけど、少しお母さんに近づけた気がしている。

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